お知らせ

2018.06.28
危険負担~民法改正で変更となる点について~
本日は、民法改正で影響を受ける「危険負担」に関してお話して参ります。

<現行民法では>
危険負担とは、売買等の双務契約が成立した後に、債務者の責めに帰することができない事由により目的物が滅失して履行不能になってしまった場合、それと対価関係にある反対債務(売買代金請求権等)も消滅するのか否か、についての考え方です。「債権者主義」と「債務者主義」があります。

現行民法では、原則として債務者主義がとられています。債務者主義とは、売主(引渡請求権の債務者)の債務が売主の帰責事由なしに履行不能により消滅した場合、その反対債務である買主(引渡請求権の債権者)の債務(代金引渡債務)も消滅するという考えです。
すなわち、履行不能という危険は債務者である売主が負担し、代金は請求できません。

例外として、特定物に関する物権の設定又は移転を目的とする双務契約(不動産売買契約等)については、債権者主義をとります。すなわち、売主の引渡債務が消滅した場合には、その反対債務である買主の代金引渡債務は消滅しません。
目的物の引渡に関する危険は債権者である買主が負担し、買主は代金を支払わなければなりません。

もっとも、不動産取引の実務においては、債権者主義を形式的に適用すると、売買契約締結直後に目的物が滅失したときであっても、買主は目的物を得られないにもかかわらず、代金全額を支払うこととなり、不当な結論となる為、危険負担について契約上の特約によって債務者主義が規定されることが一般的でした。

このように実務との乖離が生じていたこともあり、危険負担の内容が見直されることとなりました。

<改正POINT>
(1)特定物についての債権者主義は否定されました。
→不動産取引実務に合わせ、債務者主義を採用しました。
すなわち、目的物が滅失した場合には、売主は代金を請求することができないこととなりました。

(2)危険負担制度が、債権者の反対給付債務を消滅させるものから、債権者に反対給付の履行拒絶権を与える制度に変更されました。
→目的物が消滅したら買主は代金債務の履行を拒絶できる制度になりました。
 すなわち、売主と買主との間で債権債務関係は消滅しないということです。
 このような債権債務関係を消滅させたいときは、買主は、売買契約を解除しなければならないことになりました。

※民法改正により、売主に帰責事由がなく履行不能となった場合でも、買主は契約を解除することができるようになりました。

不動産実務等で大変影響のある分野ですので、是非ご確認いただけたらと思います。
2018.06.15
数次相続による相続登記~中間省略が可能な場合~
本日は「数次相続」についてお話してまいります。

数次相続とは、ある方が亡くなり相続が発生したものの、遺産分割協議や相続登記がなされないうちに、さらにその相続人であった方が亡くなってしまうような場合です。このように複数回に渡って相続が発生している場合をいいます。
数次相続による相続登記をする際には、発生した相続ごとに登記を行うのが原則です。
但し、次に掲げる場合には、中間の相続による登記申請を省略することが認められています。

①中間の相続人が1人である場合
②中間の相続人が複数人であったが、遺産分割協議によってその中の1人が相続人となった場合
③中間の相続人が複数人であったが、相続放棄によりその中の1人が相続人となった場合
④中間の相続人が複数人であったが、その中の1人以外の相続人が相続分を超える特別受益者であった場合

すなわち、中間の相続人が1人となった場合に中間の相続登記を省略することができるのです。

(例)相続関係が、A(夫)、B(妻)、C(長男)、D(長女)、E(Cの妻)、F(CEの子)、であり、
H15年にAが亡くなり(1次相続)、H28年にCが亡くなった(2次相続)場合を考えます。

1次相続の相続人はB(妻)、C(長男)、D(長女)、2次相続の相続人はE(Cの妻)、F(CEの子)となります。
そして、B(妻)、D(長女)、E(Cの妻)、F(CEの子)の間で遺産分割を行った結果、Fが不動産を取得することとなった場合、被相続人Aから直接相続登記を行うことができます。(上記②に該当)

この場合の登記申請書の登記原因記載例は以下のとおりです。
登記の原因  年月日C(長男)相続 →日付はAの死亡日を記載、
                  日付の後にC(長男)の氏名を記載
       年月日相続      →日付はCの死亡日を記載

相続登記を複数回行わなければならないのか、一度行うだけで良いのか、によって費用や必要となる書類の数も変わってきます。

相続に関するご相談がございましたら、ひらた司法書士事務所へお尋ねください。
2018.06.11
休眠担保権の抹消~古い担保権が残っていたら~
本日は古い担保権が残っていた場合の対応方法についてお話してまいります。

古い担保権、いわゆる「休眠担保権」とは、担保権の被担保債権の弁済期から長期間経過しているにもかかわらず、担保権が実行されずに存続している担保権のことをいいます。

このような休眠担保権を放置していても、担保権の登記は消えません。また、そのままにしておくと、その担保権が設定されている不動産を売却若しくは新たに融資を受けて担保権を設定することが困難となります。
その為、登記記録から消す場合には、担保権抹消登記手続きを行う必要があります。
もっとも、通常の手続きで抹消することは難しく、ある一定の手続きを経なければなりません。

<休眠担保権抹消の手続き>
1.債権額の金額を供託する方法
2.除権決定を得る方法
3.裁判手続き
4.完済資料・証拠を提出する方法

今回は1.債権額の金額を供託する方法について触れてゆきたいと思います。

休眠担保権を抹消する方法として、「被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害額全額に相当する金銭を供託」して、登記所へ申請する方法があります。
以下3点の要件を満たす必要があります。

①担保権者が行方不明であること
②被担保債権が弁済期から20年が経過していること
③被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭を供託すること


①について
個人の場合は、配達証明付郵便を送付して「不到達」であることが「行方不明」に当たります。
その為、登記簿上の住所から戸籍謄本、住民票を調査し、そこから判明する住所地には、郵便を送付することとなります。
法人の場合は、登記所にて法人の登記事項証明書がないか調査を行います。この段階で登記事項証明書や閉鎖登記事項証明書が取得できると、「行方不明」には該当しません。そのような登記記録がない場合に初めて「行方不明」であるとされます。但し、そのような状況は稀である為、法人についてこの手続きをとることは困難と考えられております。


②について
<登記簿に弁済期が記載されている場合>
昭和39年改正以前の担保権の登記は「弁済期」が登記事項でした。
その為、登記簿に記載されている弁済期から20年が経過している必要があります。

<登記簿に弁済期が記載されていない場合>
債権の成立日が弁済期となります。また、債権の成立日が不明の場合には、担保権を設定した日が被担保債権の弁済期となります。

<根抵当権の場合>
元本確定日を被担保債権の弁済期とみなします。元本確定日は、元本の確定の登記があるとき、又は、登記記録上元本が確定したことが明らかであるときはその記録により、それ以外の場合には、当該担保権設定の日から3年を経過した日が元本確定日とみなされます。


③について
供託時において現実に残存する債権等ではなく、登記記録に記録された債権額等から推察されるそれらの最高額をいいます。この供託金の計算は大変複雑のため、管轄法務局への問い合わせ等が必要となります。

休眠担保権について疑問な点等ございましたらひらた司法書士事務所へお尋ねください。
2018.05.25
遺言書を発見したら~遺言書の検認~
みなさんこんにちは。
本日は遺言書の‘検認’についてお話してまいります。

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、そのうち公正証書遺言以外は≪家庭裁判所による検認手続き≫を行わなければなりません。

検認とは,相続人に遺言の存在・内容を知らせ、遺言書の形状・日付・内容を検証して、“証拠として保全”する手続きです。その為、検認によって遺言書が法律的に有効となるわけではありません。

検認手続きを経ないと、その後の手続き(相続登記や預貯金口座解約など)において、遺言書を使用することができません。

遺言書の保管者又は発見者は、遺言者の死亡を知ったのち又は遺言書を発見したのち、遅滞なく家庭裁判所に検認の申し立てを行わなければなりません。

また、封印のある遺言書については、家庭裁判所において相続人等の立会いの下で開封しなければならないとされています。
(※検認前に開封してしまった場合、その遺言書が無効となるわけではないのですが、行政罰に課される可能性があります)

家庭裁判所へ検認の申し立てを行う場合、以下の書類を提出することになります。
(1) 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本
(2) 法定相続人全員の戸籍謄本
(3) 申立書

遺言書の検認など遺言書に関してご相談がございましたら、ひらた司法書士事務所へおたずねください。
2018.05.13
不在籍・不在住証明書について~名義人の住所を変更するにあたって~
みなさんこんにちは。
本日は、不在籍証明書・不在住証明書についてお話いたします。

所有権を移転する際や担保権設定を行う際に、登記名義人の登記簿上の住所と現在の住所とが異なっている場合には、登記名義人表示変更登記を行わなければなりません。
この変更登記を行うには、変更を称する書面を添付することになっており、通常は住民票等で証明します。
なお、複数回住所を移転していた場合には、戸籍の除附票を添付することによって、住所の連続性を証明することとなります。
しかし、戸籍の除附票や住民票の除票は、保存期間が5年間と定められており、保存期間経過後は廃棄されてしまうため、登記簿上の住所と現在の住所の連続性を証明することが困難なケースが出てきます。

そのような場面で利用されるのが「不在籍証明書・不在住証明書」です。

不在籍証明書とは、「本籍の表示として申請書に記載されたところに、証明対象者の戸籍が存在しないことを証明するもの」です。
不在住証明書とは、「申請日現在に住所の表示として申請書に記載されたところに、証明対象者の住民票が存在しないことを証明するもの」です。

登記簿上の住所と現在の住所との連続性を戸籍の除附票等で証明できない場合に「不在籍証明書・不在住証明書」を添付する趣旨は、
「登記簿に記載されている住所には、現在その人は住所も戸籍も存在しませんが、登記を受けた当時(登記名義人となった当時)には、確かにそこにいました。その人が登記簿上の人物と同一であることは間違いありません」
と誓約することで、登記の真実性の担保を図る点にあります。

登記を申請する際には、「不在籍証明書・不在住証明書」とともに、対象不動産の登記済証や課税通知書等を添付します。
(法務局によって取扱いが異なりますので、事前の管轄法務局への確認が必要です。)

ご不明な点等ございましたら、是非ひらた司法書士事務所へお尋ねください。